前回、ちょっと昔の沖縄では「あ、い、う」3つの母音しか使わず、日本語の「え」は「い」になり、「お」は「う」になる。「沖縄(おきなわ)」は「うちなわ」となって、「うちな〜」となる。という話を述べました。
今回はその続き。
前の記事はこちら。
以前の記事で「僕はどちらかというと『上代特殊仮名遣い』というのは、あくまで一時代のことだから、あまり気にしなくていいのでは?」と書きましたが、「上代特殊仮名遣い」論によって、母音の変遷の過程が解明された意義もあります。今日はその辺について書[…]
東は「あがり」、西は「いり」
それよりも、沖縄の言葉で興味深いのは、地名に残っている言葉だ。
昔からの地名に残っている言葉は、昔使われていた言葉を探る手がかりになる。
例えば沖縄の地名では、東西南北を
●東=あがり
●西=いり
●南=ふぇー(はえ)
●北=にし
と読む場合が多い。
そういえば、「西表島」と書いて「いりおもてじま」って読むよね。
あっ、分かった。
東を「あがり」、西を「いり」というのは、太陽が、東から上がって、西に入るというのが語源でしょう。
標準語は「西」が「にし」よね。
まず、なんで標準語は「ひがし」「にし」って言うんだろ?
東(ひがし)と西(にし)昔(むかし)と古(いにしへ)の語源。
標準語の東は日が上るので「日向かし(ひむかし)」が「ひんがし」となまって「ひがし」。
西は日が沈むので「去にし(いにし)」がなまって「にし」。
ちなみに「古(いにしへ)という言葉も「去にし方」から来ていて、「昔(むかし)」という意味は「向かし」から来ている。時間的な「向こう側」。
意味合いの違いとしては、
「昔(むかし)」とは自分や、せいぜい数代前の先祖が経験した時代あたりまで。
「古(いにしへ)」とはそれより古いの時代を指していたようだ。
沖縄の場合は、北がなぜ「にし」と言うかには、いんろん説があるが「去にしへに来た」方角だからという説は面白い。
つまり我々の祖先は北から来たと言いたいんだな。
これはトンデモ説だと思うけど⋯。
7,300年前の鬼界カルデラ(鹿児島南部)の超巨大噴火で、あたりの生物と縄文文化が壊滅したことは良く知られている。
そのときに沖縄に逃げ延びることができた縄文人もいるのかも知れない。沖縄の北北東が鹿児島だ。僕はロマンを感じている。
南風は「はえ」。栄ゆ(はゆ)映ゆ(はゆ)は光注ぐ南のイメージ。
九州、中国、四国地方の一部の方言でも南風を「はえ」というから、昔は南を意味する一般的な言葉だったんだろうな。
昔、九州の南部にいた「隼人(はやと)」の語源も、南の人を意味する「はやひと」がなまったんだという説がある。
たぶん昔は「はえ」は「はや」だったんだろうな。だから南に住む人が「隼人(はやと)」なんだ。
ちなみに僕は南のことを「はえ」というのは「栄ゆ(はゆ)」「映ゆ(はゆ)」という言葉と関係があるような気がしている。南は明るいからね。「生ゆ(はゆ)」という言葉も同根。
現代語の「早(はや)い」「流行(はや)る」「囃(はや)す」などのポジティブ的な言葉もここから派生していったんじゃないかな。
昔、日本武尊(やまとたけるのみこと)が山に登り、東南を望んで「吾嬬者耶(あづまはや)」(ああ、わが恋しい妻よ)と3度嘆いたときの「はや」のニュアンスにも通じるものがある!
とにかくポジティブな言葉なんだ。
⋯⋯これはみんなが納得する説は存在しない。
だけど方角を男女に分けて
●きなた(男の方角)
●みなた(女の方角)
で説明しようという人もいるみたい。
次回は、それを考えてみたい。
本日はこれまでっ!
日本語の「北(きた)、南(みなみ)」の語源に定説はありませんが、男女の関係に注目した面白い考えがあります。今日はその話題について。 前の記事はこちら [sitecard subtitle=関連記事 url=https://swi[…]