「雷(いかづち)、稲妻、命(いのち)、力(ちから)」、「ち」のつく言葉は霊力を感じさせる言葉。同じ「た行」の、「つ」のつく言葉には「妻、爪、摘む、つまむ、紡ぐ、詰める、積む、罪、集める、旋風(つむじ)」など、なにやら「爪・詰め」と関係ある言葉が多そうです。今回ははそんなお話。
雷、稲妻、命、力の語源
雷(かみなり)の語源は「神鳴り」だとはみんなすぐ感じるだろう。
神鳴りという言葉は10世紀頃に書かれた『和名抄』が一番古い使用例で、一般化したのは中世からと言われている。
雷(いかづち)の語源は厳(いか)+つ+霊(ち)で激しい霊力を表した言葉。「つ」は「〜の」の意味。
「厳(いか)」は厳めしい、怒るの意味。「霊(ち)」はパワーのようなものを表す言葉。
血(ち)、乳(ち)、唾(つば)のように、体から出でくるものには霊力のようなものが宿っていると昔の人は考えた。霊力があるものも「霊(ち)」というようになった。
神様の名に「カグツチ」「タケミカヅチ」「ナムチ」などがあり、妖怪の名にも「ミズチ(水霊)」「ノヅチ(野霊)」「オロチ」などがある。
「命(いのち)」の語源は「息(い)の霊(ち)」。息をするパワー。
「力(ちから)」の語源は「霊(ち)+体(から)」
からは輩(やから、ともがら=仲間)のからで人体を指す。血の通った体のパワーという意味。
四国で一番高い山は石鎚(いしづち)。これも石つ霊(ち)で石のパワー。
もとは稲夫(いなづま)、稲の夫なんだ。昔の人は雷によって稲がはらむと考えていた。
妻の語源。爪から派生した言葉
昔は結婚すると、本家の脇に妻屋(つまや)という新居を建てた。そこからきた言葉らしい。妻屋の「つま」とは端っこという意味。爪(つめ)という言葉も同源。爪から派生した言葉には、摘む(つむ)、つまむ、つねる、紡ぐ(つむぐ)などがある。
詰め、積む、罪、集め、つむじの語源
詰めるはやはり端(つま)まで押し込めるという意味だから、同源と考えて良いだろうね。積むも、ものを詰めるから派生した言葉だろうね。
罪(つみ)は悪い行いの積み重ね。
同じ悪いことでも罪(つみ)と咎(とが)とは古代の日本では若干意味が違うんだ。
「咎(とが)」とは盗んだり殴ったりといった、人に咎められようなこと。(法と)違う(たがう)が名詞化した言葉。
「罪(つみ)」とは聖なるものを汚したり、タブーを破ったりすること。神への配慮を怠ったり、日頃の行いの悪さが積み重なって罪になる。
「じ」とは風の意味。だがこれも風が集まった状態だから、同根の言葉。
風に関しては、ブログ「祝島物語」に面白い記事を見つけたので紹介しておきます。
【瀬戸内海の祝島での風の呼び方】
北 風 きた
北東風 きたごち
東 風 こち
南東風 まじごち
南 風 まじ
南西風 やまじ(これは山風のこと)
西 風 にし
北西風 あなじ
本日はこれまでっ!
日本語のナ行の「音(ね)」に関係ある言葉には、鳴く、泣く、鳴る、ねぎらう、願う、ねだる、述べる、名乗る、祈る、呪うなど、音に関係する言葉がいっぱいあります。「値打ち」という言葉もここからできました。今回はそれらの言葉の語源について。 祈る[…]