上代特殊仮名遣い1

神様は上(かみ)さまか? 上代特殊仮名遣いについて(日本語の語源)

上代特殊仮名遣い1

神様は空とか上の方にいるから、上(かみ)様だと思っていたら、「いやいや、昔、神は「かむ」だったのじゃ〜」と聞いて、じゃあ神の語源って「噛む」かな? とか思っていたら「だから昔の日本語の母音には甲音と乙音があって〜」⋯⋯とかいう今でも議論のあるややこしい「神」の語源について。

神様は上(かみ)さまか

 

弥生時代の男性
へっぽこ隊長
「神」様の語源だが、空とか上の方にいるから、
「上(かみ)」様だと、普通、思うだろ?
さくや
うん、なんとなくそう思ってた。今でも女主人のことなんかを御上(おかみ)さんていうものね。
弥生時代の男性
へっぽこ隊長

そういう説もあるけど、反対する説もある。

神の「み」は乙音、「かむぃ」って感じだ。
それに対して、上(かみ)の「み」は甲音で違う音。

だからその説は成り立たないという考え方だ。

納得できない女性
さくや
何? その甲音とか乙音って。
弥生時代の男性
へっぽこ隊長

そういう説もあるという話。

だが、神武天皇の本名「神日本磐余彦」が「カムヤマトイワレビコ」と読まれるように、もともと神は「かむ」と言われていた。

「上」は「かむ」とは読まない。
別の言葉のようにも思える。

さくや
あっ、「神(かむ)」の語源って「噛む」じゃないの?
日本の神様って、祟るばかりで噛みつきそうだし。
へっぽこ隊長
そう考える人も多いと思うけど、噛むの「む」も甲音だから、この説に従うとしたら駄目。
さくや
だから何? 昔の発音が何でわかるの!

昔の日本語の母音には甲音と乙音があった?

弥生時代の男性
へっぽこ隊長

奈良時代の古事記(712年)や日本書紀(720)、万葉集(783年)には万葉仮名が使われている。

その中で、例えば「神(かみ)」は
「加微、迦微、伽未、可未、可尾」などと書かれている。
そして「上(かみ)」は「可美、賀美」などと書かれている。

神の「み」=「微、未、尾」(乙音)と
上の「み」=「美」(甲音)とは、発音が違う音なんだ。

ということは、音が今とは違っていたのでは? と考えた人がいる。

へっぽこ隊長

最初に気づいたのは本居宣長。

そしてそれを定説化したのが国語学者の橋本進吉。その説は「上代特殊仮名遣い」として定着した。

それを引き継いだのが岩波古語辞典を書いた大野晋さん。

僕は大野さんの本を読んだが、面倒くさくなって放り投げた。

さくや
単に根気がないだけじゃない!
大野晋さんって日本語とタミル語の関係を研究してた人ね。
弥生時代の男性
へっぽこ隊長

その後、いろんな論争があり、2000年代になって藤井游惟という人が「上代日本語は現代と同じ5母音であり、上代特殊仮名遣いとは、白村江敗戦( 663年)後の百済から帰化した書記官たちが、朝鮮語の音韻感覚で日本語の条件異音を聞き分け、書き分けたものだ」という見方を発表した。

日本人は5母音で話してるつもりでも百済人には8母音に聞こえたということだ。

弥生時代の女性
さくや
今でも朝鮮語は8母音だって聞くわね。
で、どっちが正しいの?
へっぽこ隊長

どっちが正しいか分からないが、この説を適用すると、
例えばよく言われている

「檜(ひのき)」の語源が「火の木」

という説は成立しなくなる。

檜の「ひ」が甲音なのに対して、火は乙音。

そもそも檜は檜皮葺(ひはだぶき)なんかの用例のように「ひ」だけで木の名として通用していたとも言える。

弥生時代の女性
さくや
じゃあ「杉」がまっすぐの「直ぐ」からきているというのは?
笑顔の男性
へっぽこ隊長

「杉(すぎ)」の「ぎ」は乙音。

「直ぐ」と「過ぐ」は同根だと思われ、
「過ぎ」は乙音だから正しいと思う。

さくや
で、神様の「かみ」はどうなったの?
「上(かみ)」も「噛む」も甲音だからダメなんでしょ?
弥生時代の男性
へっぽこ隊長

僕はどちらかというと「上代特殊仮名遣い」というのは、あくまで一時代のことだから、あまり気にしなくていいのでは? とも思っている。理由は今度説明する。

今日はこれまで。

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